みなさんこんにちは。編集長の水口です。
今回、長野県のある場所で、古民家と共に過ごす2つのご家族を取材する機会をいただきました。私自身が古民家保存をするために不動産建築業に転向して2年が経とうとしている今、初心を思い出させてくれるような旅になりました。古民家に住むことを考えた時、よく話題になる地域コミュニティについてもお伺いしていますので、是非参考にしていただければ。

場所は長野県松本市の周辺一帯を指す「松本平」の中で、一番早く太陽が昇ることから名付けられた「朝日村」という地域。車だと松本まで40分、電車だと名古屋や東京新宿までも塩尻駅(最寄駅)から直通していると一定の利便性を持つ里山です。取材した3月下旬でも雪が降り積もっていましたが、翌日はその名の通り、澄み切った空にいち早く太陽の光りが溢れ出し、まさに凛とした空気に包まれていました。
取材翌日の朝。活力をくれる太陽のパワーと透き通った空気が気持ちいい。

取材翌日の朝。活力をくれる太陽のパワーと透き通った空気が気持ちいい。




あえて「どん詰まり」の場所を。大久保さんご家族


まず最初にご紹介するのは大久保さんご家族。実は、ファシリテーションもさせていただいた倉敷有鄰庵で開かれたゲストハウス開業合宿で一度お会いしたことがある方です。当時は話だけ聞いていた自宅の古民家を実際に見ることができました。
大久保さんご家族。この村で生まれた花子ちゃん。

大久保さんご家族。この村で生まれた花子ちゃん。


大久保さんお気に入りのハナレとの渡り廊下。

大久保さんお気に入りのハナレとの渡り廊下。




移住のきっかけは妊娠でした。


移り住む前、ご主人の匡晃さんは九州出身で東京でお仕事をされており、奥様の綾乃さん(静岡出身)も同じく東京で働いていました。第一子となる花子ちゃんの妊娠がきっかけで、子供をゆったりのびのびと育てられる場所を、と移住場所を探していた時に朝日村の地域おこし協力隊の募集を見つけられこの村に移住することになりました。ただし、紹介された住居はアパートだったらしく、「古民家に住めるなら移住する」という条件を提示するほど、古民家に住むことを希望されたのだとか。

幾つか案内された古民家の中でも大久保さんが選んだのは「どん詰まり」の場所に建つ古民家。そこは、人が住む「里」と生き物が住む「山」とのまさに境界線。奥に進めば標高2000mを越す北アルプスの山々へと向かう場所。その場所がお気に入りの大久保さんは「消費するだけじゃない暮らし」を目指して、近所の畑を借りて農業をしたり、将来的にはこの稀有な場所を体験できるように、地元の人とも交流するゲストハウスやカフェを開くことを考えているそうです。
こちらが、大久保さんの家の横から山の奥に続く道。

こちらが、大久保さんの家の横から山の奥に続く道。



村で生まれた子は「村の子」、その子にとっても故郷になる。


一番印象に残った言葉がこちら。よく田舎への移住を希望される方で相談されるのが、地域に馴染めるかという悩み。大久保さんご家族の場合は、朝日村で長女の花子ちゃんが生まれたことで、そんな悩みはどこかへ行ってしまいました。いわゆる”ヨソ者”という概念がそもそも当てはまらず、「花子ちゃんは村の子だ」、そう言って地域の方が良くしてくれるそうです。すべての方に当てはまることではありませんが、お子さんの妊娠を機に移住を考えられる方はよく聞くこと。実際に大久保さんご家族の後に続き、この集落だけでも移住組のお子さんは6人もいるそう。そして、つい先日、大久保さんに第二子が誕生!この街が故郷になる子供がまた一人増えました。
長女の花子ちゃん。花子ちゃんにとっては「朝日村は故郷になる」と大久保さん。

長女の花子ちゃん。花子ちゃんにとっては「朝日村は故郷になる」と大久保さん。




建物に惹かれて朝日村に。藤森さんご家族


藤森さんご主人と奥様は、長野県内での移住組。ご主人は大手企業の開発職に就かれておられましたが「環境に考慮した暮らしがしたい」と会社を辞め、大町で田んぼと畑つきの家に転居して生活を始めました。その後独学で蕎麦打ちを学び松本での修行を経て、安曇野でご自分のお店「藤森」をスタートされました。
藤森さんご家族。全てを包み込んでくれるような笑顔が素敵なお二人。

藤森さんご家族。全てを包み込んでくれるような笑顔が素敵なお二人。



もう一度”生産性の高い暮らし”へ


4年間の営業を経て、某飲食サイトでもかなり有名になられて順風満帆なその時、かつて大町で過ごした「土と畑に触れる暮らしに還りたい」と、移住を決意されました。場所を決めていなかった藤森さんご家族に朝日村への移住を決意させたのは、正面と裏手に一反ずつの畑が付いている理想通りの古民家。そのまま住むには不便だったとのことですが、腕のいい大工さんにどうしてもお願いしたかったと、職人さんを探しに探した奥様。結果、その想いが届いたとてもとても素敵な古民家に生まれ変わりました。引き続き、「朝日そば ふじもり」として営業されており、近所の休耕地を使ってそばの栽培も行う理想の生活スタイルを実現されています。奥様に「困ることは何かありますか?」と意地悪な質問を投げかけてみましたが、「あんまりないです。今までの経験が本当に生きていることを実感します」とのお返事。あまりお出かけもなさらないそうなのですが、「畑があるので、どこにもいかなくてもここで完結できているんです」と、思い描いた生活ができるとそれ以上を求めることもなくなるんだなと感心させられました。
巡り合った物件を、大工さんと協力してここまで魅力的な古民家に。

巡り合った物件を、大工さんと協力してここまで魅力的な古民家に。


半年以上かけて、腕のいい大工さんと一緒に改装を重ねて理想の古民家に。

半年以上かけて、腕のいい大工さんと一緒に改装を重ねて理想の古民家に。


どこを見てもこだわりが感じられる室内。

どこを見てもこだわりが感じられる室内。




取材を終えて


取材を終えて感じたことは、どちらのご家族も「無理しない、そのままで。」という暮らし方をされていること。大事にしている考え方や想いのままにシンプルに行動を続けていると、実際に同じ価値観の人や場所、建物や職、そういった周辺を取り囲む要素が吸い寄せられてきているようです。そんな2つの家族が辿り着いたのが長野県朝日村でした。大久保さんや藤森さんのような先輩がいることで、次の移住者への大きなサポートになるかもしれませんね。
取材最終日は役場の方と、地域活性や古民家活用の話し合いの場を持ちました。

取材最終日は役場の方と、地域活性や古民家活用の話し合いの場を持ちました。

Writer ライター

Takayuki Minakuchi

Takayuki Minakuchi

「COMINCA TIMES」編集部。京都の祖父母の家は築数百年の茅葺屋根。