みなさんこんにちは。
編集長の水口です。

先日、岐阜白川村から長野小谷村まで横断した際に、「SATOYAMA EXPERIENCE」を運営する、"株式会社美ら地球(以下、美ら地球)"の皆さんに会いに飛騨古川に行ってきました。
「SATOYAMA EXPERIENCE」のオフィスがある岐阜県飛騨古川の風景。

「SATOYAMA EXPERIENCE」のオフィスがある岐阜県飛騨古川の風景。



最初に、英語をベースに作られたホームページと、地域の魅力を再発掘されているその活動を見た時、衝撃を受けたのを覚えています。「古民家を未来に繋ぐためには、建物だけ残すのではなくその古民家で何らかの活動をするのが大切。」と常々思っていますが、地域に訪れる人を生み出すために、地域の魅力を掘り起こし、地域外、さらには海外からも多くの方を呼び込んでいる「SATOYAMA EXRERIENCE」の活動はとても参考になりました。

今回は、創設時から運営に参画されている白石さんにお話を伺い、現地のご案内もしていただきました。
株式会社美ら地球の白石さん。

株式会社美ら地球の白石さん。




地域活性を提案していた"外側の人"から、実行する"内側の人"へ。


白石さんも所属する「SATOYAMA EXPERIENCE」運営母体の"美ら地球"の代表山田さんは、元々はコンサルタントとしてグローバル企業の企業変革支援に従事していました。退職後、旅に出て世界29ヵ国以上を巡ったことで日本の地方部に受け継がれる文化の価値を再認識し、飛騨古川に移住されました。

飛騨古川は、知名度の高い飛騨高山から車で30分とかからず古い町並みや古民家も多く残っているのですが、当時は上手く地域資源を発信することができずに人口流出や高齢化が進んでいました。一方、ちょうど政府では”Visit Japan”プロジェクトが本格化しており、山田さんは"インバウンド"の提案を求められて、"観光協会"に対してプレゼンテーションを行ったそうです。

しかし、その頃まだまだ少なかった外国人の受入に対し、関係者も半信半疑、その上この提案されたプランを実行する最適な"人財"がいませんでした。その結果、山田さんは提案した内容を自ら実践することになりました。


古民家などの空き家調査をした結果見えてきた、"町"の課題。


「SATOYAMA EXPERIENCE」の立ち上げを前提として、山田さんや白石さんはスタッフ複数人でチームを組み、3年間この飛騨エリアを歩き回りました。主な目的は「古民家調査」。地域の魅力の一つとして、人々の暮らしに密接に結びついていた"民家"を掘り起こして行きました。そこで"約2割は空き家、3割以上は2人以下の居住で、高齢化も進んでおり〜中略〜歴史的価値がありながらも地域内全体の空き家の増加、廃屋化という飛騨地域の問題が浮き彫りに(※)"なったそうです。※飛騨里山オフィスHP、飛騨古民家調査より抜粋。http://www.satoyama-office.com/outline/

さらにその状況を危惧したメンバーは、調査範囲をより広義にし、地元で古民家再生などを行う"株式会社柳組(以下、柳組)"の方々の協力も得て、なんと地域にある8,333棟にも及ぶ住宅を1軒1軒訪ねる「空き家調査」を実施しました。

この2つの活動から、飛騨古川という"町"が今後どうなって行くのかという"未来"が見えてくるようになったといいます。
1000匹の鯉が泳ぐ飛騨古川の中心を流れる水路と町並み。

1000匹の鯉が泳ぐ飛騨古川の中心を流れる水路と町並み。




外国人を受け入れる、スペシャリスト集団を。


「SATOYAMA EXPERIENCE」の運営メンバーは約10名。サイクリングで飛騨古川周辺を案内するツアーを中心に、カスタムツアーや古民家でのロングステイなどを提供されています。そのメンバー構成について驚かされたのが、「スタッフのほとんどがIターン移住」「全員、ネイティブレベルの英会話能力を持っている」という2点でした。(!)

1点目については、ご紹介した山田さんも白石さんも県外の出身。地域の魅力を再発掘するためには、"当たり前の日常"を過ごしている現地の人ではなく、外の地域から来た方が良いということを思い知りました。今では町の人達とも融合し、すれ違えば挨拶をしたり、地元の祭にも必ず呼ばれる存在になったそうです。
町のお味噌屋さんのお婆さんとも親しく話す白石さん。

町のお味噌屋さんのお婆さんとも親しく話す白石さん。


飛騨古川の祭「起し太鼓」にも毎年参加されています。

飛騨古川の祭「起し太鼓」にも毎年参加されています。



そして、2点目についても、かつてはスタッフになるためには"海外での居住経験最低2年以上でないと応募できない"というルールがあったほどの徹底ぶりでした。「SATOYAMA EXPERIENCE」に訪れる外国の方々は、お金に余裕のある富裕層も多いのだといいます。短期間に各地を移動する旅行の仕方ではなく、2週間もしくはそれ以上バケーションをとって、ゆっくりと1箇所に滞在する方達です。そういう方々が気兼ねなく滞在し、日本の文化を齟齬なく知ってもらうために、高度でストレスのないコミュニケーション能力が必須だとお伺いした時には本当に納得しました。実際、飛騨古川に来る方々は「なんで東京の◯◯はこうなんだ?」といった、それまでに訪れた日本各地での疑問を、スタッフの方々に問いかけるそうです。
サイクリングツアーで外国人観光客を案内する白石さん。

サイクリングツアーで外国人観光客を案内する白石さん。




「空き家」に再び灯をともすプロジェクトも始動。


白石さんら"美ら地球"のみなさんと一緒に調査をした"柳組"の方々も、空き家問題を解決するために"期間単位で空き家を賃貸する"「飛騨里山オフィスプロジェクト」という具体的な行動を興します。オフィスや会議の場所としての空き家利用や、外国人の宿泊場所としての提供、それらの企画考案から接客、及び建物の管理などを行っているそうです。このプロジェクトは"美ら地球"のにみなさんも「SATOYAMA EXPERIENCE」サイトでLONG STAYと称して紹介し、集客のお手伝いをされているそうです。
外国人が滞在できる古民家。

外国人が滞在できる古民家。


今まで見た中でも極太級の梁。

今まで見た中でも極太級の梁。


株式会社柳組に所属し、里山オフィスプロジェクトを先導する竹川さん(写真右)。

株式会社柳組に所属し、里山オフィスプロジェクトを先導する竹川さん(写真右)。




色々書きましたが、詰まる所、ホスピタリティだと思いました。


今回この取材記事を書きながら、改めて「なぜこんなにもこの飛騨古川に人が集まってくるのかな」といつもの分析癖を働かせていたのですが、なんともしっくりこない感覚がありました。この記事の結び方を決められずに何日も原稿が止まってしまっていました。。。
そして、最後に出てきたフレーズが、なんてことのない在り来たりな小見出しの言葉。何か他のもっと良い表現の仕方がないものかと考えているのですが、シンプルに伝わることを考えるとこれがいいのかなと思っています。

今回、初日の午後だけお会いする予定でご挨拶した白石さん、その日もたっぷりと現地案内していただいたのですが、まだ時間があるならと、予定していなかった翌日も昼頃まで現地案内をしてくれました。色んなところで地元の人を紹介してくれたり、町の"小ネタ"的なところもたくさん教えてくれるので、"Iターンした人"であることを完全に忘れてしまうほど。自分の地元を自慢するように、笑顔で人に接していらっしゃったのを覚えています。

「SATOYAMA EXPERIENCE」を運営する"美ら地球"の皆さんの、言語能力を含む洗練されたコミュニケーション力と、内なる"歓待"の気持ちが、世界中・日本中から絶えず人を呼び込んでいるのですね。白石さんにまた会いに飛騨古川に行きたいな、そんな風に思える出会いでした。
「SATOYAMA EXPERIENCE」を運営する株式会社美ら地球のみなさん。

「SATOYAMA EXPERIENCE」を運営する株式会社美ら地球のみなさん。




▼「SATOYAMA EXPERIENCE」
岐阜県飛騨市古川町弐之町8番11号
http://satoyama-experience.com/jp/
Writer ライター

Takayuki Minakuchi

Takayuki Minakuchi

「COMINCA TIMES」編集部。京都の祖父母の家は築数百年の茅葺屋根。